COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の5類移行〜薬局の業務はどう変わる?~

2023年5月8日より、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置付けが変更になります。「新型インフルエンザ等感染症」から「5類」に変更となることで薬局の業務はどう変わるのでしょうか?

今回はCOVID-19の5類移行後の調剤報酬上の見直しについて徹底解説します!

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令和5年5月8日からCOVID-19の感染症法上の分類が「新型インフルエンザ等感染症」から「5類」に変更されます。これにより、行動制限が大幅に緩和されますが、同時にこれまで行われてきた公費等による対策も制限されることになります。また、診療報酬上の特例措置も変更となるため、5月8日からどのように業務が変更になるのかあらかじめ準備をしておく必要があります。5月8日以降、廃止されるもの、継続されるもの、新設されるものを整理しておくことで、5類となったCOVID-19診療に対応できるだけでなく、感染症対策を平時のものとする令和6年度診療報酬改定の準備にも繋げていきましょう!

1.新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更

この章のPOINT

世界中で猛威を奮ってきたCOVID-19ですが、現在はオミクロン株が主流となっています。オミクロン株の性質である強い感染力のため、感染者数は増加しましたが、重症化する割合は低下しています。これまでは日本国内全体に様々な行動制限を行うことで、感染の蔓延・重症者の軽減を行なってきましたが、感染力の高いオミクロン株を封じ込めることは困難です。ただ、その反面、重症化する方は限られており、今後は国内全体に制限をかけるのではなく、リスクの高い方に特化した対策を行うこととなりました。その結果、令和5年5月8日からCOVID-19の感染症法上の分類を「新型インフルエンザ等感染症」から「5類」に変更します。その結果、制限がなくなるとともに、これまで行われてきた対策も行えなくなります。

令和5年1月27日、新型コロナウイルス感染症対策本部は、令和5年5月8日から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)上の新型インフルエンザ等感染症に該当しないものとし、5類感染症に位置づけることを決定しました。


感染症法上の位置付けが見直されるまでの経緯

2019年12月に中国の武漢市で第一例目が報告されてから、わずか数ヶ月でパンデミックと呼ばれるほどの世界的感染を引き起こした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)。この脅威に対抗すべく、ウイルスを発見後、類を見ない速さで治療薬やワクチンが開発されました。日本では2020年5月に抗ウイルス薬 ベクルリー点滴静注(レムデシビル)が特例承認、2021年2月にはmRNAワクチン コミナティ筋注(コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2))が特例承認されています。
また、日本国内ではCOVID-19を感染症法上の「新型インフルエンザ等感染症」と位置付けることで、医療体制に限らず、個々の行動制限まで可能としました。その結果、諸外国と比較して感染者数や死亡者数を抑えることができました。


ですが、COVID-19との戦いは簡単には終わりませんでした。RNAウイルスである新型コロナウイルスは変異を起こしやすく、ワクチンや治療薬に抵抗を示す変異株が出現しました。それに対抗すべく新たなワクチンや治療薬が開発されていきましたが、流行株がオミクロン株に置き換わったことで状況が変わってきました。
オミクロン株は感染力自体は非常に高いのですが、過去の流行株と比較して重症度は高くありません。感染が広がりやすいため、リスクの高い方を守るための医療体制は今後も継続して必要ですが、リスクが高くない方を含めて一律に入院措置や外出自粛などの私権制限の適用を見直す段階となりました。


新型インフルエンザウイルス等感染症から5類への変更

これらの状況を見て、日本国内でのCOVID-19の位置付けを見直すことが議論されました。
厚生科学審議会 感染症部会での審議が重ねられ、令和5年1月27日(第70回 厚生科学審議会感染症部会)で、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けを「新型インフルエンザ等感染症」から「5類感染症」に変更することがとりまとめられました。

第70回 厚生科学審議会感染症部会(令和5年1月27日) - 感染症部会とりまとめ(概要)

それでは、新型コロナウイルス感染症の位置付けが変更されることで、何が変わるのでしょうか?


まず、「新型インフルエンザ等感染症」、「5類感染症」に位置付けられている感染症をまとめてみます。

新型インフルエンザ等
感染症
新型インフルエンザ
再興型インフルエンザ
5類感染症インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く)、ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)、
クリプトスポリジウム症、後天性免疫不全症候群、梅毒、麻しん、
性器クラミジア感染症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、
アメーバ赤痢、RSウイルス感染症、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、咽頭結膜熱、感染性胃腸炎、
急性弛緩性麻痺(性灰白髄炎を除く)、急性出血性結膜炎、
急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く)、
クラミジア肺炎(オウム病を除く)、クロイツフェルト・ヤコブ病、
劇症型溶血性レンサ球菌感染症、細菌性髄膜炎(髄膜炎菌、肺炎球菌、
インフルエンザ菌を原因として同定された場合を除く)、
ジアルジア症、侵襲性インフルエンザ菌感染症、水痘、
侵襲性髄膜炎菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、先天性風しん症候群、伝染性紅斑、
突発性発しん、手足口病、播種性クリプトコックス症、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症、
百日咳、風しん、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、ヘルパンギーナ、
マイコプラズマ肺炎、無菌性髄膜炎、流行性角結膜炎、淋菌感染症、
流行性耳下腺炎、薬剤耐性アシネトバクター感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症

このように、5類となることでCOVID-19は季節性インフルエンザ等と同じ位置付けになることがわかります。


では、実際に行われる対応はどうでしょうか?
簡単な表にまとめてみました。

 感染症法上の対応  新型インフルエンザ等
感染症
5類
マスク 原則着用 個人の判断(R5.3.13〜)
医療提供体制 感染症医療機関 幅広い医療機関
医療費 全額公費 段階的に廃止
入院勧告 可能 不可
感染者の把握 全数把握 定点把握
入院・重症患者の把握  全数 一定期間後、定点に以降
健康状態の報告 可能不可
外出自粛要請 可能 不可
就業制限 可能 不可

このように、これまでCOVID-19に対して行われてきた行動制限・私権制限は、5類になることでほぼ全て行えなくなることがわかります。

また、5類感染症では感染者の把握について、全数把握を行うものと、定点把握を行うものに分けられます。
定点把握では、あらかじめ指定を受けた医療機関が週単位または月単位で届出を行います。
5類以降後のCOVID-19は季節型インフルエンザと同じ週1回の定点把握になります。

このように、5類移行後のCOVID-19に対する対応は、一部の例外を除き、季節型インフルエンザと同じ扱いになるということがわかります。

2.COVID-19に関わる調剤報酬上の臨時的な取扱い

この章のPOINT

診療報酬に関連する特例をまとめます。
・ 0410対応→7月31日で廃止
・ COVID-19陽性患者の治療費公費負担→廃止(薬剤費のみ公費負担継続)
・ COVID-19患者の自宅への緊急訪問の特例(継続)
・ 服薬情報等提供料1の特例(継続)
・ COVID-19治療薬を交付する場合の特例(新設)
・ 高齢者施設等に緊急訪問を行った場合の特例(新設)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については診療報酬上の臨時的な取扱い(新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて)が行われてきました。
これまで行われてきた調剤関連の対応を簡単にまとめてみます。

  • ・0410対応(電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱い)
  • ・自己負担額の公費負担
  • ・自宅/宿泊療養を行う患者に対して薬剤を配送した上で服薬指導を行なった場合の特例
  • ・COVID-19治療中の患者に関する服薬情報等提供料1の特例

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