2023年3月3日、厚生労働省は令和5年度薬価基準改定を官報告示しました。
今回の薬価改定は2022年12月21日に行われた厚生労働大臣と財務大臣の予算編成折衝に基づくもので、薬剤費として3100億円削減(国費ベースで722億円削減)するものです。
今回は12月に公開した「迫る23年度薬価改定〜医薬品安定供給への影響は?」の中で論点としてあげた
- ・改定対象の範囲(乖離率)はどうなる?
- ・算定ルールの適応範囲は?
- ・医薬品の安定供給についてどう考えるか?
- ・調整幅の見直しを行うのか?
の答えと合わせて、令和5年度薬価改定の内容・仕組みについて徹底解説したいと思います。
令和5年度薬価改定の内容が決定し、4月1日からの新薬価が公開されました。今回の薬価改定は令和3年度に続く2回目の中間年改定であることに加えて、原材料費の高騰や医薬品供給問題の最中に行われる薬価改定ということで、前回と遜色ない改定にすべきか、薬価を維持するべく配慮を加えたものにすべきかの議論が行われてきました。今回の改定では令和3年度改定で実施された一定幅(新型コロナウイルス感染症特例)のような調整幅の対応はなく、結果として令和3年度改定よりも広い範囲の品目が対象となりました。ですが、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の臨時・特例的な増額、不採算品再算定の特例的な拡大により、薬価改定の影響は一定程度緩和されています。
1、令和5年度薬価改定の対象となる医薬品は?
令和5年度薬価改定は中間年改定に該当し、乖離率4.375%超の品目を対象に実施されます。今回の改定で、薬剤費として3,100億円(国費として722億円)が削減されると試算されています。薬価改定で市場実勢価格に基づき薬価の見直しが行われます。薬価調査で調べた市場実勢価格により改定後の薬価や乖離率が決定します。
令和5年度薬価改定は2回目となる中間年改定です。
中間年改定ではすべての医薬品が薬価改定の対象となるわけではありません。
「乖離率が著しく大きい品目」に限定して薬価改定が実施されます。
中医協での議論の結果、今回の改定の対象範囲は、「乖離率4.375%」(平均乖離率7.0%の0.625倍)を超える品目が対象となりました。
(令和3年度中間年改定は平均乖離率8.0%の0.625倍に該当する乖離率5%超が対象範囲でした)
結果、改定対象品目数は13,400品目(全収載品目の69%)となり、従来のルール通りに薬価改定が実施されると削減される薬剤費は4,830億円となります。
ですが、今回の改定では「急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため、不採算品再算定について臨時・特例的に全品を対象に適用するとともに、イノベーションに配慮する観点から、新薬創出等加算の加算額を臨時・特例的に増額し、従前の薬価と遜色ない水準とする対応を行う。」こととなっており、この特例対応を含めると、最終的に今回の薬価改定で削減される薬剤費は3,100億円(国費として722億円)と試算されています。