
調剤基本料は、保険薬局の機能や体制を評価する根幹的な点数で、調剤報酬における議論において、最も注目される点数の一つです。令和8年度調剤報酬改定においては、この調剤基本料の評価の在り方について大きな見直しが行われています。
その背景には、「患者のための薬局ビジョン」において示された薬局の方向性と薬局の現状との間に見られる乖離があります。同ビジョン策定から一定期間が経過した後も、門前薬局をはじめとした立地依存の構造はなお見られており、都市部を中心に小規模乱立が指摘されています。また、医療モールなど複数の医療機関が集積する環境においても、特定の医療機関への依存構造が生じやすい点が論点とされてきました。
こうした状況を踏まえ、令和8年度改定では、受付回数や集中率といった従来から用いられてきた指標の枠組みは維持しつつも、施設や医療モール等に対する評価を見直し、立地から機能への移行を促すような見直しが行われています。
今回は、令和8年度調剤報酬改定における調剤基本料の見直しについて、将来的な薬局の姿に関する予想も交えて徹底解説!したいと思います。
令和8年度改定では、調剤基本料の評価について、受付回数や集中率といった従来の指標の枠組みを維持しつつ、その算定方法を見直すことで、医療モールや施設等における実態をより適切に評価する仕組みが導入されました。さらに、門前薬局等立地依存減算の新設により、立地に依存した構造そのものに対する評価も加えられています。
1、調剤基本料を巡る議論の背景
「患者のための薬局ビジョン」により、門前から地域(面)への転換が求められてきましたが、実際には立地に依存する形が続いており、小規模乱立や医療モールが課題として指摘されました。この問題が、今回の見直しのきっかけとなっています。
令和8年度調剤報酬改定では調剤基本料に関して複数の視点からの改定が実施されました。はじめに、点数の変化について簡単に紹介します。

令和8年度調剤報酬改定では、物件費の高騰を踏まえた対応として、調剤基本料(特別調剤基本料A・Bは除く)についてそれぞれ1点の引き上げが行われました。また、面調剤を推進する観点からの評価見直しにより、調剤基本料1・3ハについてはさらに1点の引き上げが行われ、合計で2点のプラスになっています。また、新たな減算として、門前薬局等立地依存減算が新設されています(これについては3で詳しく解説します)。
2015年に策定された「患者のための薬局ビジョン」では、かかりつけ薬局・薬剤師が機能を発揮することにより、薬局の立地が門前から地域(面)に移行することが期待されています。このビジョンに基づき、調剤報酬においても、薬局や薬剤師の機能を評価する仕組みの整備が進められています。
ですが、令和8年度改定に向けた中医協の議論の中では、このビジョン策定から一定期間が経過した後も、薬局は目指すべき方向に向かっていないのではないかと指摘されました。特に問題とされているのが、薬局の立地や処方元への依存に基づく構造です。
具体的には、都市部を中心に、特定の医療機関に依存した形で薬局が近接して開設される、いわゆる小規模乱立が見られることが示されています。また、医療モールなど複数の医療機関が集積する環境においても、個々の薬局が特定の医療機関や医療機関群からの処方に依存する構造が生じやすい点が論点とされてきました。

これらは形態としては異なるものの、いずれも薬局の評価が立地や処方元との関係に強く影響を受けているという共通の構造を有しています。その結果として、薬局の機能に基づく評価と実態との間に乖離が生じている可能性があることが示唆されています。
また、調剤報酬においては受付回数や集中率を基準に、特定の医療機関のみではなく、地域の医療機関の処方箋を広く受け付けることのできる薬局の評価を進めてきましたが、実際には制度の趣旨と必ずしも一致しない形で受付回数や集中率を下げることにより、相対的に高い評価を受けている例があることについても指摘されました。
令和8年度調剤報酬改定における調剤基本料の見直しは、こうした背景を踏まえ、薬局の機能をより適切に評価する仕組みとする観点から行われたものと位置づけることができます。
