薬剤師こだわり図鑑

在宅医療にこだわり vol.8

J-HOPリレー連載企画
在宅は特別なものではなく、
視点の変革によるもの

小林輝信先生

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1998年北里大学薬学部卒業。ドラッグストア、調剤薬局勤務を経て、2009年に徳永薬局株式会社に入社。同年在宅医療部を設立。入社後、社内にて株式会社グローライフ(ヘルパー、ケアマネジャー、サービス付き高齢者住宅、デイサービス)を設立。2018年グロービス経営大学院卒業。
現在、同社にて常務執行役員、在宅医療部本部長、株式会社グローライフ、株式会社やくも(エンバーミング事業)にて取締役。

在宅療養に必要な事とは

徳永薬局在宅医療部では現在、小児から高齢者対応の在宅医療、慢性疾患、終末期、がん性疼痛、在宅化学療法など幅広く行っています。様々な患者さんがいますが、在宅での生活を送りたい、在宅で最期を迎えたいなど、最終的に在宅療養生活を選んだ方々です。
私は「在宅医療」という言葉をあまり使わず、「在宅療養」という言葉をよく使います。患者さんの自宅での生活を支えるには、医療は重要かもしれませんが、生活にとっては一つの点であり、線としての存在は介護だと考えています。「在宅療養生活」を続けるためには、医療と介護の両輪が必要だと考えているからです。
その在宅療養生活の一部を支えるために、必要なことは「人に興味を持つ」ということだと思います。

医療と介護の視点

まず、患者さん(およびその家族)に興味を持つことです。興味をもつことで、その患者さんに薬剤師=医療人としてどのように接していくのか、それを拡げていくことが大事だと考えています。その先に、専門職としての関わり方を支える知識や他職種連携などがあり、それが寄り添うことに繋がっていくのではないでしょうか。
よく、「在宅をするにはどのような知識が必要なのか?」、「外来の業務と違ってハードルが高い」などといわれますが、薬剤師は皆、専門的な知識を既に持っていて、服薬指導をカウンター越しにすることと、何ら変わりはないと思っています。
ただ、例えば、今まで来局されていた患者さんがいつもの薬をいつも通り貰っていく…。何かしら不自由があり訪問をしてみたら、実際には服薬ができていない。いつもきれいな格好で来局されていたのに、実は家の中はぐちゃぐちゃ、食事はコンビニ弁当ばかりで、その空き箱が散らかったままに…。

このような状況を見たら、カウンター越しの時と同じ指導はしないでしょう。また、これも一例ですが、骨粗鬆症により内服治療を行なっている方であれば、内服はもちろんですが、散らかった部屋を片付けたり、居室内での歩行順路により適切な手すりをつけたり、家具等を使い手をつく場所を確認したりすることで、転倒しないように指導することも必要となります。指導は薬(モノ)のことから違うことへと移っていきます。生活を見た指導や公衆衛生的な指導を行うことも考えられますし、環境整備や介助などが必要だと感じれば、他職種へのつなぎを行うこともあるでしょう。
投薬場所が変わり、見えないものが見えてくる。視点が変わったので、それに合わせた指導になるだけで、決して特別なものではありません。

視点の変化および患者さんへの興味が合わされば、その方の病気・病状や経過、治療方法なども調べるでしょうし、自ずとどんどん知識の深掘りをしていくでしょう。視点が変われば、全てが変わります。そういった視点の変革を起こす教育が今後重要だと感じています。

生活に寄り添った視点

まだ在宅訪問をし始めた頃、肝がん末期の女性の患者さんを訪問した事がありました。その患者さんに、「私はワインが好きだったんだけど、肝臓のがんだし、飲んじゃだめよね?」と聞かれた事がありました。在宅は超初心者、薬剤師としてもまだまだ未熟だった頃の話です。外来での業務が主な当時の私は、とても恥ずかしいことながら、「お酒は体(病気)に良くないからね…」、「先生に聞かなければ…」以外には答えられませんでした。
訪問後、先生にそのことを伝えると、「あの人は、最期に好きなワインを飲んでいいか?とお前に聞いたのに、お前の返答で最期に満足して死ねないかもしれないんだぞ。そこまで考えたのか。」と言われました。

私の視点が変わり、今まで学んできたこと、経験してきたことの全てが変わった瞬間でした。
その後、その患者さんに連絡し、「先生にも聞いてみました。飲んでも大丈夫ですよ。その代わり何かあれば私に連絡してください。」と伝えました。
再訪問時に確認をすると、とても喜んでいて、「最期の最期に好きなワインが飲めるとは思わなかった」と、笑顔で仰ってくれました。飲んだ量は、おちょこの反対側の量…ほんの一なめ程度だったのにです… その後、先生が訪問した際にも、「最期に大好きなワインを飲めて嬉しかった」と仰っていたそうです。

在宅療養に関わる事は難しいのか

調剤薬局の在宅業務の一つの問題点として、365日24時間対応があります。
上記の話と同じ頃、私は一人で在宅訪問を行い、365日24時間をしていました。
365日24時間の対応、それを6年間一人で続けました。とてもやりがいがある業務でしたが、ある時怪我を負ってしまい、一週間ほど入院することになってしまいました。その時、私が行なっていた在宅訪問の部分が完全に機能しなくなってしまったのです。はじめて、医療には継続性が必要であり、継続性がなければ、結果としてその先の患者さんが一番不利益を被ってしまうと感じました。

継続性を可能にするのには、組織化と経営の盤石さが必要です。一人で365日24時間対応するのは大変です。しかし、10人の当番制で行えば、月に3〜4回、週1回程度です。これだと現実的に行える業となります。上に加えて、その組織を持続させるような経営が必要です。経営が悪化していては自分が提供したい医療すら提供できない可能性があります。 これは、決して「単店舗だから」「チェーンだから」などといった薬局の規模を言っているのではありません。ここでも視点の変えてみると、地域の他の薬局であったり、他職種との繋がりであったり、そういった連携により解決できるのではないかと考えています。

これからの薬剤師への期待

最後に、2019年は薬剤師にとって大きな変化の年です。既存の業務が根底から変わる可能性もあります。今はまだ在宅業務と外来業務などと分けられて呼ばれていますが、あと数年経てば、在宅業務はなんら特別なものではなくなるでしょう。この大きな変化の年に、私達も視点の変革をしていかなければならないと感じています。

<J-HOP連載企画~在宅最前線~について>

J-HOP(一般社団法人 全国薬剤師・在宅療養支援連絡会)と協力し、在宅を実施している薬剤師の最前線の情報を提供する事を目的に連載企画として実施しています。

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